2020.5.22 家族信託

生前贈与と家族信託の違いとは

相続時のトラブルや、相続での損失を避けるためには、元気なうちから相続準備を進めておくことが大切です。

親本人が安心して暮らすためにも、しっかり相続について考えておきましょう。

今回は、似ているようで違う、生前贈与と家族信託について解説します。

  • 生前贈与と家族信託はどう違う
  • 贈与税はどうなるの?
  • 財産の管理は?
  • ケース別にどちらを選ぶべきか

など気になる相続対策について事例を交えながらご紹介します。

生前贈与と家族信託の違い

生前贈与と家族信託は、どちらも生前に財産や名義などを移しておくという点では似ています。

しかし、目的と機能には大きな違いがあり、何のために行うか、誰のために行うかを見極めて選ばなければなりません。

基本的に生前贈与は、財産の名義を得る本人のために行われます。

それに対して、家族信託は財産の名義を得る人ではなく、信託で利益を得る人のために行われるものです。

「財産の名義を移す」という結果自体は生前贈与も家族信託も同じですが、その目的・内容は全く異なるということを知っておきましょう。

生前贈与には贈与税がかかる

生前に贈与をする手続きが生前贈与とはなんとなくわかっていても、実際に行った場合に何が起きるかはイメージしにくいものです。

財産を贈与する際には、贈与税がかかります。財産を受け取った側には、受け取った金額に応じた重たい贈与税負担が待っています。

ただし課税対象となるのは、年間110万円を超える額の場合です。

そのため毎年110万円未満を贈与していけば、節税につながります。その他、結婚してから一定期間を経た配偶者の間での贈与についての特別控除や、相続時精算課税制度など様々な制度もあるのでしっかり調べておきましょう。

生前贈与では、財産を受け取った人は自由に財産を管理して処分できます。

生前贈与の具体例

「現在住んでいる家を生前に息子に譲りたい」という具体例を参考に、生前贈与について考えてみましょう。

父親が生きているうちに、息子に家の所有権を渡したいというのはよくあるケースです。

遠方に住む長男に、父親が住む実家を生前贈与しておき、相続トラブルを避けておこうと考える人は少なくありません。

生前贈与で家の所有者が父から息子に移ったら、その時点で息子は自由に家を売ったり、賃貸契約を結んだりできることになります。

贈与が成立した時点で、家の所有権は父親にはないため、全ての権限は息子に移っている状態です。

そのため万が一、息子が勝手に実家を売却しても法律上は全く問題ありません。

そして実家の売却で得た利益を、全て息子が手にしても合法です。

生前贈与後に家の所有権を父親に戻したい場合には、再度、息子から父への贈与を行う、または売買契約を結ぶなどの行為が必要となります。

生前贈与で注意すべきポイントは2つ

生前贈与でのトラブルを避けるためには、主に2つのポイントがあります。

お互いに贈与を認識できているか

生前贈与を成立させるためには、お互いに贈与を認識していることが必須です。

財産をあげる側が財産をあげることを認識し、財産を貰う側が財産を貰うことを認識していなければなりません。

そのため、祖父から孫へ生前贈与を行う場合などで、孫が幼く「財産を貰う」ことを認識して意思表示ができなければ財産贈与は成立しないことになります。

同様に祖父から成人した孫に生前贈与を行うケースでは、祖父が認知症などで「財産をあげる」ことを認識して意思表示できなければ、財産贈与は成立しない可能性があるでしょう。

お互いに贈与を認識して、はっきりと財産贈与の意思を表示できない場合は、財産管理に生前贈与は使えません。

贈与された人が財産を管理できるか

また生前贈与には、財産を受け取る人は財産を自分で管理できる状態という条件があります。

財産を貰う人が貰った財産を自ら管理して、自ら使い、自分で処分できる状態でなければ生前贈与は成立しません。

孫の名義である預金口座に財産を移したとしても、通帳が孫以外の手元にあれば孫が財産を管理している状態とは言えないでしょう。

生前贈与を成立させるためには、財産を貰った人が自由に使える状態にしておく必要があります。

家族信託の事例と特徴

生前に全ての権利を移す生前贈与と違い、家族信託では目的に合わせた対応ができます。家族の事情やなど財産管理の目的は、ケースバイケースです。

財産を残す側、管理する人、財産を譲り受ける側のそれぞれの立場、事情に合った方法を選びたい場合は、家族信託でそれぞれが納得できる形を見つけていきましょう。

生前贈与か家族信託かで迷う具体例

健康で元気な80代の男性が、二人いる息子たちに財産を残す場合で考えてみましょう。

今は元気なものの、もしも認知症になった場合に備えて生活や資産をどうするかを考えて不安を感じているとします。

認知症になったら老人ホームに入居したいので、自宅を売却して老人ホームに入居する資金にしたいと考えました。

そのため、万が一の場合には家族信託で自宅を売却しようと息子たちに提案したところ、次男からは生前贈与を提案されました。

家族信託での解決例

上記の具体例の場合では、生前贈与を選ぶと自宅の名義は息子に移ります。

名義が息子に移った時点で、自宅の管理も処分も全て息子が自由に行えるようになるので、元気で自宅に住める状態で自宅を売却されても違法ではありません。

自宅売却で得た利益も全て息子たちのものです。生前贈与をしてしまった結果、財産をあげた元気なうちに、何の相談もなしに許可なく自宅を売却されてしまっても、法律上は問題がないという状況になります。

家族信託で自宅の名義を息子に変更した場合は、自宅の管理・処分は契約内容の通りに行わなければなりません。

名義は息子たちに移っても、信託の内容に沿った管理が行われます。

ケース別にみる家族信託

実際の相続でよくあるケースをご紹介しながら、生前贈与と家族信託の選び方を見ていきましょう。

財産管理だけをしてほしい場合

財産管理だけを任せたい場合は家族信託がおすすめです。

目的が財産管理なら、財産を勝手に処分される可能性が否定できない生前贈与は避けましょう。

家族信託を選択すれば、財産の管理や処分について契約で決められます。

会社の経営権を移したい場合

事業継承を予定していて、財産権を移すタイミングと経営権を移すタイミングと前後させたい場合も家族信託が良いでしょう。

親から子供へ財産を譲ることを考えていても、親が認知症になってしまえば財産の売却や移転は困難となります。

早めに家族信託を検討しておくと安心です。

すぐに資産継承をしたい場合

すぐに資産継承をしたいケースでは、生前贈与を行います。高額の相続税が発生する場合、精算課税制度を活用してください。

まとめ

子供たちに財産を残したい、高齢となった親の財産を適切に管理したい場合に、生前贈与や家族信託は有効な手段です。

しかし、どちらが適しているかはケースバイケースで判断は難しいと言えます。

特に分割して相続しにくい不動産や、兄弟が多いケースなど、誰に管理を任せるべきか、きちんと財産を受け取れるかなど判断に悩むこともあるでしょう。

生前贈与や家族信託は、家族が安心して暮らすための手段です。

それぞれの家庭の事情に合わせた選択をするためにも、判断に迷ったたら専門家を頼ることをおすすめします。

本当に必要な対策は人それぞれ違うので、豊富な事例を解決してきた専門家に相談しながら、早めに相続対策を始めてみてください。

Information
笠田先生

司法書士法人ワイズパートナー

司法書士 
笠田 佑介(東京司法書士会所属)

司法書士法人WISEPARTNERは、認知症後の対応だけではなく、認知症になる前の対策など、ご相談者様が現在状態で、何の対策を取らなければならないかのご相談も対応可能です。専門家として、認知症への正しい選択肢を提供しています。

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