2020.5.22 家族信託

家族信託は認知症の対策として有効か?

家族信託で認知症対策を行う人が増えています。認知症は高齢になるほど発症する可能性が高く、いつ発症するかはわかりません。

65歳以上の5人に1人が認知症を発症すると言われているので、元気なうちから財産をいかに守るかについて考えておくことは重要です。

今回は、

  • 認知症で凍結される資産とは?
  • 認知症になって財産管理で困ること
  • 家族信託のメリット

について確認していきます。認知症になってからでは間に合わないことが多いので、早めに対策を練っておきましょう。

認知症になると不動産売却ができない

認知症になると、基本的に資産が凍結されることになります。正常な判断ができないので、資産を守るために凍結されると考えて良いでしょう。

しかし資産凍結されてしまえば、たとえ本人のためでも資産を活用することはできません。

認知症になると家を売却できない?

認知症になると資産が凍結されるので、当然ながら不動産売却はできません。

売買契約が成立するためには、不動産の権利をもつ本人の意思能力が必要です。

認知症になれば正しい判断ができない状態で結んだ不動産売買契約とみなされ、契約そのものが無効となります。

たとえ本人のために使うお金を用意するためだったとしても、不動産を売却することはできません。

有効な契約を結ぶことができない以上、売却だけでなく家を賃貸に出すことも不可能です。

認知症になったら家を手放して、売ったお金で老人ホームに入居したいと漠然と思っていても、認知症になってからでは不動産売却ができないことは知っておきましょう。

成年後見制度では対応できないのか?

認知症になった場合に成年後見制度を活用すれば、不動産売却の手続きは可能です。

成年後見制度は、認知症などで判断能力が十分にない人に代わって、成年後見人が契約などを行い支援するための制度です。

認知症になってから成年後見人を選ぶ場合、選ぶのは当然ながら認知症になった本人ではありません。家庭裁判所が親族や弁護士、司法書士などの中から後見人を選びます。

そのため、親族以外を家庭裁判所が後見人に選ぶケースもあり、選ばれなかった場合も不服申し立てはできません。

親族間で争いがある場合や、親族が財産を使い込んでしまう可能性が高い場合などは、親族以外の第三者が後見人に選ばれる可能性が高いでしょう。

データでは親族が後見人に選ばれるのは、全体の25%程度です。後見人制度を活用して不動産売却をする場合、自分名義の資産は自分のために使えます。

しかし、本人以外のために資産を活用することは困難です。

つまり、父親名義の資産を母親に使うことができない可能性があります。

成年後見制度を利用しても、認知症になった父親の資産は、母親の老人ホーム費用には使えないため困るというケースも増えています。

認知症になると銀行口座も凍結される

認知症により凍結される資産には、銀行口座も含まれます。

亡くなった後に銀行口座が凍結されると知っている人でも、生きているうちに貯金を使えなくなる場合があることを知らない人は多いです。

銀行口座の凍結は各銀行の判断で行われ、認知症の疑いで銀行口座からの出金が停止される場合があります。

本人が銀行に認知症について申し出ているわけではないのに、なぜ認知症を疑われるかを不思議に思う人も多いでしょう。

実は物忘れがひどくなり通帳やカードなどを失くして、再発行の手続きを行う場面で凍結されるケースが多いです。

何度も再発行の手続きを行う人に対して、銀行は簡単な認知症検査を実施することがあり、認知症の疑いがあれば取引ができなくなってしまいます。

認知症により銀行口座が凍結されてしまえば、介護費や入院費、手術費なども預貯金から捻出できません。

認知症になった際の財産管理で起こり得るトラブル

高齢になれば認知症のリスクは誰でも高まります。

いつ認知症を発症するかは分からないので、資産凍結されないように対策を取っておくことが大切です。

介護と相続のトラブル

認知症の人を介護することは大変です。

自宅での介護ではなく施設に入居するにしても、施設とのやり取りを子供たちの内、施設に支払う費用を誰が負担するかで揉めることも多いでしょう。

兄弟間の負担がアンバランスであるのに、「相続は均等に」という部分に不満を感じるケースもあります。

しかも認知症になってしまえば不動産契約も生前贈与も、預貯金の出金もできなくなってしまいます。

その他にも遺産分割協議への参加や、契約していた保険の受取、定期預金の解約も原則できません。

相続税対策ができなくなる可能性も

一般的に、自宅の権利や口座の名義を世帯主にしているという場合は多いでしょう。

妻が認知症で介護をしていた場合、万が一、夫が先に亡くなってしまえば認知症の妻が夫の財産を相続することになります。

つまり、銀行預金も不動産も父親名義という状態で、認知症の母親を残して父親が亡くなった場合には、銀行預金も不動産も含め資産凍結となる可能性は高いでしょう。

認知症の母が財産を受け取った後では、相続税対策はできないと考えてください。

成年後見人や生前贈与は認知症対策になる?

認知症になった後で成年後見人にできることは限られています。

生前贈与にもデメリットがあります。

成年後見人の限界

後見人が本人に代わってできることは限られます。基本的に、後見人は本人の利益になること以外はできません。

本人のための生活費、医療費、介護費用に充てるためなら不動産売却も可能なものの、本人の配偶者のためにお金を用意できない点には注意が必要です。

また、法定後見人の制度利用には費用がかかります。

家庭裁判所への申し立ての費用、本人の判断能力を鑑定する費用、弁護士や司法書士に支払う費用など、最初に支払う費用が必要です。

そして、家庭裁判所が親族以外の弁護士や司法書士などを後見人に選んだ場合、後見人への報酬が継続して必要となります。

生前贈与のリスク

生前贈与では財産についての権利を贈与することになるため、贈与されたお金を何に使っても合法です。

そのため、贈与した財産が本人のために使われるかどうかは、財産を受け取った人次第となります。

生前贈与では、財産を贈与した目的と違った使い方をされるリスクがあると言えるでしょう。

認知症対策に家族信託が選ばれている理由

認知症になってしまってからでは、相続対策は不可能です。そして認知症になる前に生前贈与をしてしまうこともリスクを伴います。

そのため、認知症対策としては財産を管理する権利を移す家族信託がおすすめです。

家族信託と税金

委託者と受益者が同一である生前贈与で不動産管理を引き継いでしまうと、所有権が移り贈与税がかかります。当然、不動産取得税などの税金の支払いも必要です。

家族信託の場合は管理する権利だけを移動するため、贈与税も不動産取得税も発生しません。

家族信託を遺言書の代わりになる

資産を貰う権利を誰に与えるかは、家族信託をスタートするときに決められます。

不動産の管理だけは息子に任せ、万が一、不動産売却が必要になった時にはお金を受け取る権利は母親にという決め方も可能です。

妻が認知症で夫が亡くなった場合など、家族信託で不動産の管理は息子、不動産売却や賃貸などで得られるお金は妻にということができます。

「自分の死後も妻の生活を守りたい」「先祖から引き継いだ土地や建物を守りたい」「財産の管理は信頼できる人に任せたい」と考えている人は、早めに家族信託を進めておきましょう。

まとめ

認知症と診断されれば、家族信託も生前贈与もできません。不動産や預貯金なども認知症と診断された後は、凍結されてしまいます。

認知症対策として家族信託は有効です。

大切な資産と大切な家族を守り、安心して暮らすためにも、早めに家族信託を検討して将来のリスクに備えましょう。

Information
笠田先生

司法書士法人ワイズパートナー

司法書士 
笠田 佑介(東京司法書士会所属)

司法書士法人WISEPARTNERは、認知症後の対応だけではなく、認知症になる前の対策など、ご相談者様が現在状態で、何の対策を取らなければならないかのご相談も対応可能です。専門家として、認知症への正しい選択肢を提供しています。

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