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家族信託では、信頼できる相手に財産を託し目的に沿って管理・処分してもらうことで、特定の人に経済的な利益を与えることができます。一見難しそうな制度ですが、手続き自体は簡単で裁判所を通す必要がなく話し合いと合意で決定することが可能です。
また、家族信託は財産管理や相続対策などの1つとして、家族信託を用いることがあります。
家族信託は、財産を所有している人(委託者)が家族など信頼できる人(受託者)に対して財産の管理を委託し、決められた内容に従って利益を得る人(受益者)の財産管理や運用を行うことです。
自分が生きているうちに、自分の財産を誰に何の目的でいつ渡すかを決めることができ、財産を管理や運用は信頼できる受託者に託します。自分が生きているうちに家族信託を行うことで、家族に管理や運用を任せておき、自分はそこで得た利益を受けることもできます。
また、司法書士に依頼することでほとんどのことを代理してもらえるため、司法書士との打ち合わせや家族への説明、必要な書類の提出、契約書の確認などだけで手続きを完了させることができます。
ただ、手続きを始める前に全体の流れを把握していることは、スムーズに手続きを進めるためにも重要です。この記事では、家族信託の開始する準備から家族信託が終了するまでの流れを詳しく紹介していきます。
【関連記事】家族信託とは?仕組みやメリット・手続きの流れをわかりやすく解説【司法書士監修】
目次
家族信託は、基本的に以下の流れで進んでいきます。
ここでは、家族信託を開始するまでの流れについて紹介します。
家族信託の利用を検討しているのであれば、まずは家族に家族信託の利用を検討していることを伝えましょう。
よく「他の家族の同意は必要ですか?」という質問がありますが、特に必要ありません。家族信託は受託者との契約になるため受託者の同意さえあれば、受益者の同意もその他の家族の同意も必要ありません。
しかし、個人の判断で進めてしまうと相続争いのトラブルの種になるリスクがあるため、説明し同意をとっておくことをおすすめします。
家族信託では、実現させたい目的の設定が何よりも重要です。目的は受託者の行動指針になり、原則として目的を外れた用途で処分できなくさせることができます。
また、目的をしっかり定めることで、信託する財産の範囲や運用期間なども自然と明確になってきます。目的の例として主に以下のようなものがあります。
家族信託でどこまでできるのかを自分で判断するのは難しいと思いますので、家族信託に詳しい司法書士などに相談しながら決めていきましょう。実績のある司法書士などに相談すれば、過去にあった事例を基に家族信託の制度を十分に利用した目的に設定できます。
認知症などになった後の財産の管理や運用を目的に家族信託を検討している人は、併せて成年後見制度の検討をおすすめします。成年後見人制度とは、認知症などによって判断能力が低下した相手の保護や支援が目的の制度です。
財産に対して積極的な運用というよりは、管理・保護していくことしかできませんが、家族信託にはない「身上保護に関する代理権」を獲得できます。この権利があることで、入院の手続きや介護施設の入居など医療や介護に関する契約が可能です。
目的を決めた後は、信託する財産(信託財産)を決めていきますが、どのような財産でも信託できるわけではありませんので注意が必要です。
信託できる財産は主に以下のような財産的価値のあるものとされます。
なお、預貯金は基本的に銀行側で預貯金の譲渡を禁止されているため、「預貯金」として信託することはできません。預貯金を信託財産にしたい場合は、現金として信託する必要があります。
信託できるとして紹介した財産でもローンがあるなど信託できないこともありますので、慎重に判断していくことが重要です。また、受託者を複数人にしてそれぞれに別の財産を信託することも可能です。目的に応じて、受託者の人数や信託する財産についても考えていきましょう。
目的や信託する財産が決まった後は、受託者と受益者を決定していきます。
受託者は、目的達成のために財産を管理・処分してくれる家族信託のキーマンです。受託者は必ずしも親族である必要はありませんが、一時的にまとまった財産を受け取ることになります。不必要なトラブルを回避するためにも、家族も納得し安心できる人でなければなりません。
自分だけで決めるのではなく、家族とよく話し合って決めていくことが重要です。
また、信託の目的が特定の人の生活の保障など、万が一受託者の遂行が難しくなった時に、受益者の生活に深刻な影響を与えるような事情がある場合、万が一に備えて後継受託者を選定しておくことをおすすめします。
「家族信託を相談した司法書士などを受託者にしたい」と考える人もいるかもしれません。しかし、業務として受託者になる場合は、国が発行する免許が必要になります。
司法書士などはこの免許を取得していないため受託者になれません。ただ、受託者を監督する信託監督人になることはできますので、受託者選びに不安がある人は相談してみてはいかがでしょうか。
家族信託によって利益を得る受益者の範囲や数に制限がありません。また、契約する際に受益者の同意が必要ないため、まだ幼い子どもや生まれていない孫などを受益者にすることも可能です。
そのため、第1の受益者が死亡したら、第2の受益者に…と細かく受益者を指定でき、複数世代にわたる相続もできます。
家族信託の内容が決まったら契約書を作成し、公正証書にしていきます。契約書の作成に関しては、まだ新しい信託内容であるため、決まった書式として確立されていない部分があります。
そのため、ネット上には雛型などが公開されていますが、目的が完全に一致することはないため、細かい部分までカバーが難しいでしょう。
万全な契約書を作成するには、司法書士などの専門家への依頼が必要です。
契約書として完成したら、公証役場に持ち込み公正証書にしましょう。公正証書にすることで、トラブルの際に信用性の高い証拠として利用できます。また、万が一紛失した場合も再発行が可能で、金融機関での口座作成の際にも有効です。
信託契約書を公正証書にする場合、以下の書類が必要です。
【関連記事】家族信託に公正証書が必要な3つの理由と公正証書作成の手続きを解説
現金が信託財産に含まれる場合、受託者は自分の財産と信託財産を分けて管理する必要があり、専用の口座(信託口口座)を持たなければなりません。
専用の口座といっても単純に新しい口座を開設すればいいというわけではありません。
受託者が万が一死亡したり、銀行口座の差し押さえを受けたりしたときに固有財産ではなく信託財産として扱ってくれることを前提とした口座で開設する必要があります。
どこの銀行でも開設できるわけではないので、あらかじめネットで検索しておくか、司法書士などに確認しましょう。
不動産の名義変更には、必要書類が多いだけではなく審査から完了まで1~2週間程度かかってしまうため、早めに進めておきましょう。不動産の所在地を管轄している法務局で登記変更手続きを行いますが、手続きには困難な部分多いため、司法書士などに依頼して対応してもらうことをおすすめします。
これらの準備ができたら、家族信託契約書に記載された開始期間・開始条件に従って管理や処分を行います。
開始後に受託者の業務として主に以下のようなことを行っていきます。
帳簿は収益不動産ではない場合や現金だけの場合、通帳記帳や出納帳程度で問題ありません。しかし、信託財産によって収益が発生する場合は、委託者が作成していた帳簿と同等の内容の帳簿を作成する必要があります。
また、取引の際に発行された領収書や書類、帳簿などは10年間の保存義務がありますので、捨てないように注意しましょう。収益が出るような場合は、税務署へ書類を提出する必要がありますので、必要に応じて信頼できる税理士を探しておくことをおすすめします。
家族信託では、このような書類作成だけではなく家族信託の内容によっては、障害を持った子どもの様子を確認する、預けたペットの様子を確認するといった項目を設けることもあります。
契約書に記載した期限や条件を満了し、家族信託が終了した後は、受託者が清算受託者としてすべての任務を完了させ財産や権利、契約を清算していきます。
具体的には、
などをすべて行っていきます。
もし、清算する際に債務が多く返済が難しい場合は、破産手続きを申し立てることも、この清算業務に含まれます。
また、残った財産(残余財産)は、受託者や受益者がそのまま受け取れるわけではありません。あらかじめ家族信託契約書上で余った財産を誰に渡すか決定しておけば、それに従って引き渡しが行われます。
万が一、引き渡し先が決定していない場合、委託者または委託者の相続人、その他一般承継人が引き渡し先になります。
子どもに財産を相続する目的で、家族信託を選ばれる方もいます。未成年に大金を渡すと、どのような目的にお金を使うか分からないため、親であれば不安を感じることもあるでしょう。
しかし財産管理をする受託者に信頼できる親戚などを指定しておけば、相続が発生した際に必要な生活費や教育費だけを子どもに受け取らせることも可能です。
家族信託は遺言とは異なり、委託者が生きている時から財産を子どもに渡せる点がメリットです。
認知症対策としては、他に成年後見制度がありますが、自分が認知症になるまで財産管理を始められないといったデメリットがあります。
その点、家族信託は認知症になる前から財産管理を子どもや親戚などに任せることができます。成年後見制度のように、金額が大きい場合にも家庭裁判所の許可は必要ありません。
認知症を発生する前から自分が決めた契約内容で、財産の処分を行えます。
家族信託では、書類作成や司法書士などへの相談、不動産の名義変更などに対し一定の費用や税金が発生します。
ここでは家族信託にかかる費用や相場について紹介します。
公正証書の費用は、信託財産の金額(目的の価額)によって手数料が以下のように変わってきます。
目的の価額 | 手数料 |
100万円以下 | 5000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 17000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 23000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 29000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 43000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額 |
法律行為に係る証書の作成についての手数料については、証書の枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚(法務省令で定める横書の証書にあっては、3枚)を超えるときは、超える1枚ごとに250円が加算されます(手数料令25条)。
参考:日本公証人連合会 公証事務10手数料
また、証書の枚数が縦書きで4枚、横書きで3枚を超えると1枚ごとに250円が加算され、別途費用が発生します。
家族信託の目的を決めるサポートから、契約書作成、不動産登記までの司法書士費用は以下の通りです。
相談料または着手金は事務所よって異なり、目的の複雑さや受託者・受益者の人数などによっても費用が変わってきます。依頼する前には必ず料金形態を確認しておきましょう。
信託財産の中に不動産が含まれる場合、名義が受託者でも受託者の固有財産になるわけではないため、信託設定時に不動産取得税がかかりません。ただし、名義変更時に登録免許税として、固定資産税の評価額×0.4%(土地の場合は0.3%)の税金がかかります。
表:(1)土地の所有権の移転登記
内容 | 課税標準 | 税率 | 軽減税率(措法72) |
売買 | 不動産の価額 | 1,000分の20 | 令和5年3月31日までの間に登記を受ける場合1,000分の15 |
相続、法人の合併又は共有物の分割 | 不動産の価額 | 1,000分の4 |
- |
その他 (贈与・交換・収用・競売等) |
不動産の価額 | 1,000分の20 |
- |
家族信託では、委託者と受益者が異なると様々な税金が発生します。このような手続費用について誰が支払うかは、家族信託契約書で明記しておくようにしましょう。
家族信託の流れを簡単に説明しましたが、個人で家族信託を深く理解し法的に有効な契約書を作成するのはかなり困難なことです。ここでは、どこに相談するのがいいのか、信頼できる相談窓口の探し方について紹介します。
家族信託は、家族信託契約書を作成でき不動産登記にも対応できる、司法書士に相談することをおすすめします。
銀行や保険会社の中にも相談を受け付けてくれることがありますが、信託できる財産が金銭だけなど、細かい制限があることがほとんどです。
将来的なトラブルを考慮し、希望に合う家族信託成功させるには、司法書士や弁護士への相談が最短です。
司法書士への相談をおすすめしましたが、家族信託は比較的新しい制度です。相続を中心に対応している司法書士や弁護士の方でも、受任経験のない方も珍しくありません。
ネットで検索すると取り扱い分野や解決事例が掲載されていることがあります。もし、見つけられない場合は、相談前にメールなどで家族信託について相談できるか確認してみてください。
その他に、以下のような対応をしてくれるかも信頼できる司法書士の特徴です。
専門用語ばかりで説明が不親切だったり、報酬費用について説明がなかったり、事務所によっては家族信託を進めていくなかで何かしらトラブルが発生する可能性があります。
良さそうな事務所を見つけたらまずは、相談をしてみて信頼できそうか確認してみることをおすすめします。
私たち司法書士法人WISEPARTNERが選ばれる理由
- 01認知症対策(家族信託・任意後見等)
- 02認知症になられた後の対応(成年後見人就任・親族後見人へのサポート)
- 03お亡くなりになられる前の対策(遺言書作成・死後事務委任の受託)
- 04お亡くなりになられた後のお手続き(遺産承継による名義変更等)
ご相談者様が現在どのような状態で、何の対策を取らなければならないかのご相談だけではなく、その対応までお受けすることができます。既に何かに困っていらっしゃる方はもちろん、特になんの自覚症状がない方も、毎年健康診断を受診してご自身のお体の状態を診てもらい対策するのと同じように、ご自身(もしくはご家族)の取り巻く状況から起こり得る問題を抽出し、対策を取ってみませんか?
家族信託は内容が複雑になることもあるため親族の理解をしっかり得た上で、抜け漏れのない契約書を作成しておかないと、余計な相続トラブルの種を作ることになります。
スムーズに家族信託を進めていきたい人は、家族信託や成年後見制度に実績を持つ司法書士法人ワイズパートナーへぜひご相談ください。
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