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家族信託(かぞくしんたく)とは、認知症などで自分自身の財産を管理できなくなってしまうリスクに備えて、自分の家族に財産管理や処分をできる権限を与えておくことのできる、改正信託法によってできた比較的新しい制度です。
【家族信託はこんな人におすすめ】
成年後見制度のように、本人の判断力が低下していなくても家族信託をすることも可能ですし、相続人全員を集めて話し合わずに信託を決めることもできるので、手軽に安心して資産を管理できる方法として注目を集めています。
今回は、家族信託の特徴をメリットとデメリットを挙げながらご説明します。実際に家族信託を行う際の手続きの流れについても簡単に触れていきますので、家族信託が気になる方はぜひ一度専門家に相談しながら、前向きに家族信託を考えていきましょう。
目次
家族信託とはどのような制度なのでしょうか。ここでは仕組みや信託できる財産、成年後見制度との違いなどについて紹介します。
家族信託とは、自分の財産を家族などの信頼できる人に託し、あらかじめ決めた目的を達成するために管理・処分してもらう、財産管理制度のひとつです。これにより管理する人(受託者)と経済的な利益を受けられる人(受益者)を分けられます。
2つの権利を分けるメリットは、受益者の判断能力が低い場合や複数人が所有権を持つことで不利益が生じる場合でも、受託者が一元で管理・処分を行ってくれるため、受益者は経済的な利益を受けられるところです。
例えば認知症の妻がいる場合、自分が死亡もしくは認知症になってしまうと妻は財産管理ができず生活を保障できなくなりますよね。受託者に信託し、妻を受益者にしておくことで万が一自分に何かあったとしても妻の生活費を保障できます。
信頼できる相手と家族信託契約を結ぶことで、家族の経済的な負担を減らせたり、遺族の生活を保障できたり、安心が生まれます。
受託者は委託者の決めた目的に沿って、受益者が正しく利益を受けられるように財産を管理・運用・処分していかなければなりません。家族信託のキーマンとなる受託者ですが、成人しており一般的な判断能力のある人であれば、血縁関係に関わらず自由に指定できます。
ただ、家族信託の目的を正しく理解し、受益者の不利益が発生しないようにするために、受託者と受益者どちらにも深く関わりのある人がおすすめです。
受託者には主に6つの義務が課せられます。
このような義務の他に、家族信託の目的によっては、「月に一度、金銭を引き渡す際に受益者の様子を見に行く」などの義務を追加したり、禁止事項を契約書上で設けたりすることが可能です。
ただし、あまり多くしてしまうと受託者の負担が大きくなり、途中で家族信託が正しく運用されないなどのトラブルを招く可能性があります。何年も続くことなので、無理のないようよく話し合って決めていくことが重要です。
受託者の負担を考えると無償で行ってもらうのには少し気が引けると思う人と、家族なのだから無償にするべきなど、考え方は様々です。原則として受託者の報酬を設定する必要はありません。ただし、受託者の負担が多いことや管理・処分する際に発生する費用(手数料や税金など)を考慮して、報酬を設定することも可能です。
どうするかは委託者だけの意見で決めず受託者の希望を踏まえつつ、検討していくことをおすすめします。また報酬の支払いが決定した場合は、後々トラブルにならないよう必ず契約書に記載しましょう。
基本的に財産的価値のあるものであれば信託することが可能です。ただし、財産価値のあるものの中には規約で譲渡が禁止されていたり、名義が変更できず信託できなかったりするケースもあります。
信託できる | 信託できない |
現金
担保やローンのない不動産 上場株式 非上場株式などの有価証券 自動車 債権(不動産の家賃収入など) など |
預貯金(現金にする必要がある)
上場株式 借金 農地 その他、規約などで権利譲渡が禁止されているもの |
信託できるかどうかは状況によっても変わりますので、自分で判断する前に一度司法書士などに確認してもらうことをおすすめします。
家族信託に似ている制度に「成年後見制度」というものがあります。自分の代わりに、財産を管理・処分してもらう点では同じです。しかし、家族信託では財産管理が最大の目的となる一方で、成年後見制度では判断能力が低下した委託者自身の保護・支援が最大の目的となります。
そのため、2つの制度には以下のような違いがあります。
家族信託 | 成年後見制度 | |
制度の目的 | 財産管理・運用・処分等 | 身上保護・支援 |
制度で利益を受けられる人 | 委託者が指定 | 本人 |
受託者の選定条件 | 委託者が指定 | 法定後見の場合は裁判所による選任 |
司法書士などが業務として受託者・後見人に | なれない | なれる |
財産の処分 | 契約書上で定められた範囲・内容であれば他人のためでも可能 | 本人のためにしか使用できない |
財産の積極的な活用 | 契約書上で定められた範囲・内容であれば他人のためでも可能 | 本人のためにしか使用できない |
委託者の身上保護 | できない | 本人の代理で医療・介護の契約が可能 |
家族信託だけでは適切な医療や介護を受けられないなどのリスクがあります。以下のようなケースでは、成年後見制度の併用を検討してみてもいいかもしれません。
どちらかの制度だけと決めず、それぞれの制度を組み合わせることで、最後まで自分の希望通りの人生を期待できます。
ここまで家族信託の特徴や仕組みについてご説明してきましたが、こちらの項目では家族信託を行うメリットについてまとめたいと思います。
家族信託のメリットとしてまず挙げられるものが、家族の財産管理を簡単に行えることです。後述する成年後見制度では、本人の判断力低下などないと利用できませんが、家族信託であれば生前の健康なうちから資産を管理してもらうことで、後々の病気などによる判断力低下や相続に備えることが可能です。
家族信託であればそのまま財産を運用・処分できます。
例えば、住宅を売買したい時に本人の判断能力が低下していると、本人の意思を確認できないので思うように手続きが進められないことがあります。本人の状態に関係なく財産管理を行えるため、家族もスムーズに運用や処分を進められるでしょう。
相続は遺言によって手続きができます。ただし、遺言では誰にどの程度の財産を分割するかなどを指定できるものの、世代を超えて引き継がせることはできません。
家族信託ではあらかじめ指定した期間であれば、契約書に沿った管理をしてもらうことができます。また、第2次、第3次の受益者を指定できるため、例えば受益者の妻が死亡した後は長男に相続させ、長男が死亡した場合は三男の孫に相続させるといったことも可能です。
家族信託は、複数人に受益者を指定できるところから遺留分対策にも有効です。遺留分とは、相続権のある人(兄弟姉妹・甥姪を除く)が持つ財産を最低限のもらえる割合を指します。
あらかじめ家族信託終了後に残った財産の帰属先を、法定相続割合を考慮した金額でそれぞれの相続人に指定しておくことで、遺留分トラブルを回避することが可能です。
さらに、家族信託では相続順位の指定をしておくことも可能です。財産を受け取る受益者を決めた後に、万が一その方が亡くなった後に次の受益者が誰になるかまで指定しておくことができます。
一般的な相続では、生前贈与や遺言書による遺贈がありますが、生前贈与や遺贈を行った財産を次に相続が開始した場合の相続人まで指定できません。
家族信託の手続きで作成する信託契約書では、資産継承の順番を指定できます。1人目は長男にして、2人目は次男にするなど、第二順位の引継ぎ者も決められる機能です。
金融機関は、利用者が死亡した旨の連絡を受けた時から口座を凍結し、使い込みなどを防止するため相続人が決まるまで取引をさせないようにします。
口座が凍結されてしまうと、引き落としや振込ができず、委託者の経済力で生活していた認知症の配偶者や、障害を持つ子どもの生活に支障が出るリスクが考えられるでしょう。家族信託では専用の口座を用意するため、万が一のことがあっても受託者がお金を引き出し、遺った家族の生活を保障できます。
不動産は売却するか特定の人が相続できればいいのですが、特定の人が相続するケースでは不動産と同等の金額を支払う必要があります。しかし、いきなり大金を支払うことが難しく共同相続にせざるを得ないことも珍しくありません。
不動産の共有は一見平等そうに見えますが、活用していく際に毎回共同相続した人達の意見を聞き、合意のもと行う必要があり積極的な活用ができないだけではなく、トラブルの原因になるリスクが高いでしょう。
家族信託で不動産の管理を受託者1人に任せ、不動産によって出た収益を複数人の受益者で分割するなどの相続が可能です。何かあるたびに意見を聞く手間がない上に、利益を平等に分割できるので金銭トラブルが起きづらくなります。
認知症になった後、何も指示がないと勝手に不動産を処分したり、医療や介護サービスを勝手に受けさせることができず、家族に大きな負担をかけてしまうかもしれません。
特に不動産は相続するまで処分できないため、誰も住んでいない家をそのまま放置することになってしまう可能性があります。健康なうちから家族信託の準備・契約をしておくことで、万が一の時も家族への負担を減らせるでしょう。
家族信託では株式も信託できるため、柔軟な事業承継を可能にします。例えば、株式を後継者に委託し受益者を自分にすることで経営権を手放さず株式だけ承継することができます。
第一線を退かないまま事業承継ができるのは、まだ経営者を続けたい人に大きなメリットといえるのではないでしょうか。
倒産隔離機能とは、委託者や受託者が多額の借金を背負って差し押さえを受ける際も、信託財産だけは別で守れる機能です。
例えば、経営者が自己破産によって財産を処分した場合、借金の相手方である貸主に財産は分配されます。換金可能なものは、強制的に差し押さえられてしまうのです。
しかし家族信託には倒産隔離機能があるため、多額の債務を負った時も信託財産だけは差し押さえられません。経営者であれば、倒産により財産を完全に失うリスクも避けられるでしょう(なお、弁済を免れるために信託設定した場合は取り消される可能性があります。)。
一方、家族信託には以下のデメリットがあります。メリットに比べると大きなデメリットではありませんが、成年後見制度や遺言とは違う点にしっかり気を付けながら家族信託するかどうかを決めていきましょう。
家族信託では、資産の管理や処分を受託者にお願いすることにはなりますが、高齢による判断力低下のケアや介護などの身上保護まで取り決められないことも多いです。本人の法定代理人として活動する成年後見人でなければ、身上保護に必要な契約が不十分になってしまうケースが考えられるのです。
遺産相続でもよくある話ですが、家族信託で受託者を誰にするか決める段階でも家族間でトラブルになることは十分に考えられます。
家族信託の受託者は、委託者にとって信用ができる家族に託すことになりますが、他の親族からしてみれば、「本当にきちんと管理できるのか?」「不公平ではないか?」などの不満の声が出てくることも想定しておかないといけないでしょう。
家族信託に関わる法律家には、弁護士・司法書士・行政書士がいますが、それらの人たちが家族信託に精通しているとは限りません。
家族信託は、2007年に施行された改正信託法によってできた新しい仕組みですので、ほとんど知識を持っていない・実務経験がない専門家がいることも否めません。専門家に相談する際は、家族信託に関して知見を持っている人を探していく必要があります。
実際に司法書士法人ワイズパートナーがサポートし、希望の相続に成功した家族信託の活用事例を紹介します。
持ち家で1人暮らしをする父親(A)が認知症を発症した後の不動産の処分について、子ども(B)から相談を受けた事例です。Bの希望としてはAが認知症になった場合、持ち家を売却して得たお金をAの入所費用にあてたいが、元気なうちは自宅で過ごしてほしいとのことでした。
AとB間で、Aが認知症になった場合、自宅はBが売却し代金をAの施設入所金にあてるという家族信託契約を締結しました。
委託者 | A |
受託者 | B(相談者) |
受益者 | A |
参考:https://wisepartner-shintaku.com/case/001/
相談者Aは投資用のマンションを所持し家賃収入で生活していました。
自分が認知症や死亡した場合でも、認知症で施設に入所している妻(B)が安心して暮らせるようにしたいが、認知症のため資産管理できないことに不安を持っているという相談を受けた事例です。
AとBの間には長男(C)と長女(D)がおり、Bの面倒をみてくれるCを受託者とし家族信託契約を締結しました。
Aが死亡した後も、Bが死亡するまでCがマンションを管理し家賃収入で施設利用料を支払うと契約書に記載することで、自分の死後もBの生活を保証することができます。また、施設利用料をしっかり払ってもらえるように、司法書士が受益者代理人として監督することに決定しました。
これにより、Aの死亡後にCの過失などによりBへ不利益なことが起これば、司法書士が受益者の権利を行使してBの経済的利益を保証していくことになります。
委託者 | A |
受託者 | C |
当初受益者A、二次受益者 | B、受益者代理人:司法書士 |
参考:https://wisepartner-shintaku.com/case/002/
信託終了後には投資マンションの3部屋のうち、2部屋をCに1部屋をDが取得することとし、預貯金は等分することを取り決めました。これにより、家族信託後にCが投資マンションを独占することなく、相続争いのリスクを抑えた契約書を作成することができます。
自分が死亡した場合、同居している知的障害を抱えている長男(B)の今後が心配という相談を受けた事例です。相談者(A)は年金暮らしをしていますが、持ち家と預貯金があり、頼れる子ども(CとD)がいました。
Cに自宅と預貯金2,000万を信託することで、Aが認知の発症や死亡により同居が難しくなった場合、自宅を売却してその費用でBの入所費などにあて、残りの預貯金で生活費を捻出してもらうという内容で契約を締結しました。
委託者 | A |
受託者 | C |
当初受益者 | A、二次受益者B |
参考:https://wisepartner-shintaku.com/case/003/
家族信託の契約期間をBが死亡するまでとすることで、Bの生活を最後まで保障するような設計が可能です。
独立した子ども(C)はペット不可の物件に住んでいるため自分の死後、一緒に暮らしている猫の行く末が心配という方(A)から相談を受けた事例です。
Aは信頼できる友人のBに猫をお願いしたいと思っているものの、Bも余裕のある生活ではないため、ペットを飼うことで発生する金銭的な負担を考えると、お願いしづらい状況でした。
Aが死亡した後の受益者をBとし、猫が死亡するまで養育費としてCから信託財産500万円から毎月送金してもらう内容で家族信託契約を締結しました。
あわせて、遺言書でAが死亡した場合猫をBに譲る旨を遺しました。これにより、Bに金銭面を負担させることなく猫を譲ることができます。
委託者 | A |
受託者 | C |
受益者 | A、Aが死亡した後はB |
このように家族信託では、人だけではなく大切なペットの生活も保証することができます。
参考:https://wisepartner-shintaku.com/case/005/
家族信託するには、そもそもどれくらいのタイミングで考えた方が良いのでしょうか?家族信託を考えておくべきタイミングからご紹介していきす。
家族信託を行うメリットは、何と言っても自分の判断能力が衰えてしまう前に家族へ財産を託すことができるという点が挙げられます。認知症はどんな人でも起こり得る病気なので、財産を持っている人は早めに財産管理をどうすべきか考えるはずです。この時、同時に家族信託についても考えておきましょう。
家族信託はいくら早くてもタイミング的に早すぎて問題になることはありませんが、タイミングが遅くなり判断能力が落ちている段階にまでなってしまうと信託契約が結べなくなる可能性があります。
ただし、中には家族信託を早く決めてしまうと後から気持ちが変わった時に変更できないのではないか?と不安に感じる方も多いでしょう。
家族信託は後から財産の内容を変更したり、受託者(財産管理を行う人)を変えたりすることができます。そのため、家族信託について考えるタイミングはできるだけ早い方が良いのです。
家族信託は柔軟な相続ができる半面、関係性が複雑になりやすく、注意すべきことをよく理解しておかないと、相続争いの原因を作ってしまう可能性があります。
ここでは、家族信託をする前に知っておきたい6つの注意点について紹介します。
家族信託を行うには、自分が何をしているのかをしっかり理解できる判断力が必要です。
もちろん認知症といっても進行状態や症状は様々ですので、認知症と診断されても家族信託できるかは総合的な事情や状況を総合的にみて判断されるでしょう。
ただ、判断能力の程度については判断が難しいため、医師の診断書があった場合でも有効性が認められず無効と判断される可能性もあります。
家族信託には「目的」の設定が何よりも重要です。目的とは実現させたい相続のことを指します。例として、認知症になったら家を売ってそのお金で入所費用を支払いたい、ペットを友人に譲り生活を保障したいなどです。
この目的は、受託者の行動指針となるため、契約する際はもっと細かく決める必要があります。ただ、決める際は法的な知識が必要になりますので、家族信託に実績のある司法書士などと相談して決めていきましょう。
家族信託契約は委託者と受託者との契約になるため、実は受託者の同意さえあれば、受益者や他の相続人の同意は必要ありません。だからといって、他の相続人に何も話さないのはトラブルの火種を生みます。
いきなり兄弟姉妹が親に指定されて高額な財産を管理し始めたら、贈与されたわけでなくともいい顔をしない人もいるでしょう。家族信託を行う目的や必要性について、相続に関係する人に説明し、話し合って進めていくことをおすすめします。
家族全員で協力しあえれば、受託者も管理しやすくなりますし、視線があることでお金を使い込むなどの不正もしづらい環境を作ることができるでしょう。
家族信託では固有財産ではなくとも、まとまったお金が手元に入り自分で出し入れできるため、信頼できる相手でも絶対に使い込みをしないとはいえません。
使い込みがあった場合、受益者が損失分のてん補や原状回復を請求することが可能です。ただ、受益者に判断力が低いと請求できないため不利益が生じやすくなります。
そのため、受益者が認知症を発症していたり障害を持っているのであれば、司法書士などに依頼して受益者代理人を立てることをおすすめします。
受益者代理人は、受益者の持つ権利を行使し損失に対する請求などにより受益者の利益を守ります。
銀行の中には家族信託について相談窓口を開いているところもあります。銀行の家族信託を利用するメリットは、銀行が受託者となるため、使い込みや支払い忘れの心配がなく信頼性が高いところです。
ただ、銀行の家族信託では信託財産が金銭に限られ、受託者が銀行と決まっています。そのため、ここまで説明してきた家族信託のような自由さはありません。
なので、銀行へ相談しても希望するような家族信託を実現できない可能性があるので、ご注意ください。
家族信託を司法書士などに依頼すると一定の費用が発生します。そのため、できれば自分で対応したいと思う人もいるでしょう。
もちろん司法書士や弁護士への依頼が必須な制度ではありませんので、自分で家族信託契約書を作成したり、登記変更手続きをしたりすることは可能です。ただ、家族信託は複雑になりやすい制度で、契約書も「受託者は受益者に毎月〇円振り込むようにする」といった単純なものではいけません。
制度に沿って明確に目的を記載した上で、将来起こりうるリスクを考慮して、それに対応するための項目を追加していく必要があります。知識や経験がない個人で契約を結ぶのはトラブルの原因を作る可能性がありますので、やはり実績が豊富な司法書士などへ相談することがおすすめです。
家族信託は基本的に以下のような流れで進み、終了します。
では、具体的にみていきましょう。
家族信託を検討し始めたら、その時点で司法書士などに相談しておくことをおすすめします。具体的な信託内容が決まっていなくても
といった相談であれば、司法書士が最適な家族信託の方法提案してくれます。
もし、受託者が決まっていれば相談時に連れていくことをおすすめします。二重の説明が省けますし、目的を共有しやすくなるでしょう。
家族信託を相談する先として、司法書士もしくは弁護士がおすすめです。
税理士や行政書士も相談先として挙げられますが、税理士は法律相談への対応が難しくなります。行政書士は契約書の作成など法律相談への対応が可能ですが、代理権がないため登記が必要な場合、委託者自身で行う手間が発生します。
司法書士や弁護士を選ぶ際は、実際に相談してみて信頼できるかを確認することが重要です。信頼できるかの判断ポイントは以下の通りです。
司法書士法人ワイズパートナーでは、何度でも無料相談を受け付けています。
家族信託・成年後見制度に対応しており、家族信託では受益者代理人としての実績もある司法書士があなたの希望に沿った最適な相続について提案します。相続について検討し始めたら、お気軽にご相談ください。
相談により受託者の行動指針となる信託目的が決まったら、契約書を作成し公正証書にします。公正証書にすることで、万が一トラブルになった際に信用性の高い証拠として利用することが可能です。
契約書から公正証書の作成まで、司法書士などへ依頼しておけば、打ち合わせやできあがった文書の確認、押印程度で自分が行うことはほとんどありませんので、安心してください。
契約書が締結したら、固有財産と混合させないために家族信託用専用の口座を開設します。ただ、専用口座には一般的な普通預金の口座ではなく、銀行が提供する家族信託専用の口座を使用しなければなりません。
普通預金の口座を使用してしまうと、家族信託をしていても固有の財産とみなされ受託者が死亡した場合に口座が凍結したり、銀行の差押えを受けた場合に差押えられてしまうからです。
すべての銀行が家族信託に対応できるわけではありませんのでご注意ください。
また、不動産が信託財産に含まれる場合、所有権の移転登記と信託登記の手続きが必要です。ただ、この手続きは司法書士などに代行を依頼できるため、委託者は必要書類を集める程度の手間しかありません。スムーズに手続きが進むように提出漏れなく指示に従うようにしましょう。
実際に家族信託が開始されたら、受託者は目的に沿って財産管理を行います。日々の責務として帳簿の作成や賃貸物件の管理などが必要です。
また、年に一度財産状況開示資料を作成し受益者に報告します。家族信託で作成した書類は10年間の保存義務があるので、領収書などを含めしっかり保管するようにしましょう。
家族信託開始後は、受託者が税務手続きをしなければなりません。信託財産の収益が年間で3万円を超える場合、毎年1月31日までに信託の計算書や合計表を税務署に提出する必要もあります。
信託財産が多くなればなるほど負担も多くなるため、あらかじめ書類作成や税金の手続きで困った場合、気軽に相談できる相談先を決めておくことをおすすめします。
受益者が死亡するなどして家族信託が終了した後は、受託者が残った信託財産を契約書に従って処分します。
その後、家族信託による収益や清算にかかった費用などをまとめた計算書を作成し、受益者と残った信託財産を受け取る権利を持つ人全員に承認してもらいます。
全員が承認、もしくは1ヶ月以内に異議がない場合、受託者はすべての責務が免除され家族信託が完全に終了します。
また、終了時には信託財産が残らなかったなどの場合を除き、信託財産の所在地や価格などについてまとめた調書と合計表を翌月末日までに税務署へ提出する必要がありますので、提出忘れしないように注意しましょう。
家族信託は家族で話し合って決めることになりますが、話し合いを行う前に必ず一度は専門家に相談するようにしましょう。仮に自分たちだけで決めてしまうと、後々のトラブルにも発展してしまいます。依頼の有無は問いませんが、最低でも相談はして的確なアドバイスをもらって下さい。
家族信託に対する法的な知識を持った専門家と言えば、『弁護士』『司法書士』『行政書士』がいます。上でもお伝えしましたが、家族信託に対しての知識に乏しい専門家もいますので、必ず実績がある人物に相談するようにしましょう。
【関連記事】家族信託の相談先として最適な専門家は?司法書士・弁護士・行政書士で徹底比較
家族信託するには、まず目的を明確にしておく必要があります。目的は人によって異なりますが、例えば認知症になる前に財産管理を子どもに渡しておきたい、自分で財産の運用をするのは難しいが老後の生活資金のために子どもに運用してほしいなどの理由が挙げられます。
【関連記事】家族信託手続きの流れをわかりやすく解説|必要書類や注意点まで
家族信託では公正証書の作成や登記変更による税金など様々な初期費用が発生します。ここでは家族信託にかかる費用について紹介します。
なお、費用については原則委託者が負担します。
公正証書を作成する際、手数料として以下のような費用が発生します。
目的の価額 | 手数料 |
100万円以下 | 5000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 17000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 23000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 29000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 43000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額 |
目的の価額は、家族信託によって得られる利益、要するに信託財産の合計額によって変わってきます。ただし、信託財産以外に受託者の報酬を設定していたりすると、金額が変動することもありますので、あらかじめ司法書士などへ確認しておくようにしましょう。
不動産が信託財産に含まれる場合は、所有権移転と信託登記をする際に登記免許税が発生します。ただ、所有権移転に関しては、信託契約時に実際の所有者には変更がないとして非課税になるため支払う必要はありません。
信託登記では、不動産で固定資産税の評価額の0.4%、土地の場合は固定資産税の評価額の0.3%が請求されます。
この税金も原則として委託者が負担する必要がありますので、受託者が負担する必要はありません。
司法書士や弁護士の費用は事務所によって異なりますが、主な業務となる法律相談や契約書作成、信託登記では以下のような費用が相場となります。
司法書士 | 弁護士 | |
相談料 | 0~5,000円/30分あたり | 0~10,000円/30分あたり |
家族信託契約書作成 | 一般的な報酬基準では司法書士、弁護士とで報酬は変わらないため、分けない | 信託財産の評価額によって変動
1億円以下の場合、1%前後 |
信託登記 | 約10万円 | 約10万円 |
専門家に対する家族信託の相談は気軽に行うことができます。弁護士や司法書士などの専門家の種類は問わず、ほとんどの事務所で無料で相談を受けることができるでしょう。
また、自治体などで相続や家族信託に関する相談会を定期的に開催していることがあります。ぜひ、専門知識を持った人からのアドバイスは積極的に受けるようにしましょう。
信託契約書作成は、自分たちだけで作成することも可能ですが、公証人や専門家などの他の人に作成を依頼することで費用がかかってきます。まず、公正証書で作成する場合、1万円程度~数十万円の手数料がかかってきます。
信託する財産の額によって手数料も高くなってきますので、詳しくは以下のリンク先をご覧ください。
参考:手数料|日本公証人連合会
専門家に信託契約書作成を依頼する場合、以下のコンサルティング費用とは別で作成費用が発生する場合があります。依頼先次第ですが相場として30~50万円程度はかかるとお考えください。
弁護士や司法書士などの専門家に家族信託のトータルを依頼する場合、コンサルティング費用として報酬が設定されます。コンサルティング費用のほとんどは信託財産の割増で設定されており、1%未満といったところです。
例えば、1億円の財産を家族信託する場合、その1%が専門家に支払う費用の相場となります。信託財産が低い場合には、最低料金が決められており、少なくとも30万円程度はコンサルティング費用がかかると思っておきましょう。
家族信託とは、資産を持っている方が将来の老後や将来に備えて、資産を信頼できる家族に託して管理・処分を任せるための財産管理方法で、成年後見制度や遺言にはないメリットも多くあります。
家族の話し合いだけで決めることも可能ではありますが、大切な財産・高額な財産を管理することになれば、それだけトラブルが起きやすくもなります。
司法書士法人ワイズパートナーでは、ご相談は何度でも無料で相談はお受けいたします。わからない事や不安なことがあれば、わかりやすく説明いたしますので、お気軽にご相談ください。
まずはお気軽に、お電話・メールにてご相談くださいませ。